読書生活2010年1月号
なんか、あっという間に今年もひと月過ぎてしまいました。
個人的には問題山積しており、のんびりしてる場合ではないのですが、相変わらずのんびりしちゃってます。いけません。汗が。
今月は23冊!
■500冊カウントダウンは:★残り88冊!★
(読書生活 通算412冊+コミック38冊)
<おすすめ>
★世阿弥・訳注:野上豊一郎、西尾実「風姿家伝」岩波文庫1958
別名「花伝書」といわれる、能の秘伝書です。
その内容は、年代別修行法、演技のコツ、舞台進行の方法など多岐に渡ります。
結局、能の世界にも特別なコツなどない、あたりまえのことを愚直にやれ、それが世阿弥のメッセージだと思います。名人にそういってもらうと、すっきりしますね。
必読の書物、と思います。
★鈴木真哉「謎とき日本合戦史」講談社現代新書2001
戦国時代の合戦エピソードをまとめた本か?と思いきや、そうではない。
旧日本軍がなぜ「肉弾戦」「白兵戦」を重視(あるいはその威力を妄信)するに至ったか軍忠状などの信憑性の高い資料をもとに解き明かした本です。非常に面白い。資料価値も大。
タイトルのせいでしょうか、絶版しているようです。もったいない。
★高橋昭男「仕事文をみがく」岩波新書2002
練習問題がたくさん収録されているのがよいです。
文章の削り方=主題の捉え方については、「日本語練習帳」以上に勉強になりました。
<まあまあ>
①加藤尚武「ジョークの哲学」講談社現代新書1987
ジョーク集です。
②守屋洋「『為政三部書』講義」PHP文庫1989
為政三部書(三事忠告)というのは、いわゆる帝王学系の本です。
廟堂、風憲、牧民の三部から構成されていることから三部書といわれています。
貞観政要を参考にしているようで、よく似た話がでてきます。
③アラン&バーバラ・ピーズ「嘘つき男と泣き虫女」主婦の友社2004
「話を聞かない男・地図を読めない女」の続編です。女の評価システムの話など、またしても目から鱗の内容です。
④辻井重男「暗号と情報社会」文春文庫1999
共通鍵・公開鍵の解説、暗号の歴史など。
⑤福田和也「乃木希典」文春文庫2007
乃木希典といえば東郷平八郎と並ぶ日露戦争のスーパースター。
しかし実際の乃木は、軍人としての勇ましいイメージとは裏腹に、繊細で感受性の強い男でした。乃木は生涯、そのギャップを自覚するがゆえに、理想の軍人足らんことを極端に追い求めていきます。
そのストイックな生き方は多くの日本人から賞賛され、やがては軍神として祭り上げられていきます。それは乃木に一時的な満足を与える一方、乃木の内面と外面のギャップをますます広げ、乃木の精神を追いつめて行きます。
乃木にとって「理想の軍人」とはどういうものだったのか。なぜそこまでストイックに生きねばならなかったのか。そしてなぜ明治天皇に殉死する必要があったのか。
本書はその秘密に迫ります。
⑥津本陽「戦国武将に学ぶ情報戦略」角川文庫1998
戦国三英傑、信長・秀吉・家康の戦略について書かれています。
⑦鎌田茂雄「禅とはなにか」講談社学術文庫1979
著者の禅体験を紹介しつつ、禅の基本思想について非常に分かりやすく解説しています。
⑧山口仲美「日本語の歴史」岩波新書2006
上代特殊仮名遣い、八母音説など古代日本語について解説しています。
特に、平安時代の「係り結び」と現代語の「格助詞」の関係については、「あつ、そういうことだったのね」と積年の胸のつかえが取れるような内容でした。たいへん勉強になりました。
⑨平泉澄「物語日本史(上)」講談社学術文庫1979
⑩平泉澄「物語日本史(中)」講談社学術文庫1979
⑪平泉澄「物語日本史(下)」講談社学術文庫1979
著者の平泉澄は皇国史観学者のトップスター。戦前戦中、この人の著書は士官学校のテキストに使われるなど、広く読まれました。
戦後は、戦犯にならなかったものの東大教授の座は追われ、自宅謹慎したわけです。それが、講和条約成立・GHQ撤収にともない活動を再開。小学生や中学生に皇国史観的日本史を講演して回ったそうです。
この本はその講演録をまとめたもののようです。文章は平易で非常に分かりやすいです。
皇国史観とか国体とか、今までもうひとつピンと来なかったのですが、これを読んでようやく分かりました。
⑫岡崎久彦「小村寿太郎とその時代」PHP文庫2003
日露戦争関係です。
最近この関係に力を入れております。
小村寿太郎は日露戦争の総合プロデューサーです。いちおう日本を勝利に導きました。
ところが戦後処理、特に中国からアメリカを締め出したことについては、大東亜戦争を招いた原因ともいわれて非常に評判が悪い。
この著者(元外交官)もそう指摘しています。
それにしても、なぜ小村はアメリカを排除したのか? この分野、疑問が尽きません。
⑬小谷賢「日本軍のインテリジェンス」講談社選書メチエ2007
ミッドウエイ海戦での大失敗など海軍のインテリジェンスはさっぱりダメですが、陸軍はアメリカの暗号もしっかり解読してたりと、結構頑張っていたようです。
ただ、惜しむらくは、それを活用できる体制になっていなかったこと。宝の持ち腐れだったのですね。
その状態は残念ながら現在も続いている。
きわめて残念です。
それから、ソ連暗号の解析をするため、戦時中、東欧や北欧と協力していたとは知りませんでした。
⑭萩谷雅和・柳沢祟仁・松江協子「あなたを護る反論術」NHK出版2004
著者のみなさんは弁護士さんです。
日常ありがちな言いがかりや詐欺まがいへの対処方法を解説しています。
弁護士ならでは視点・発想に感心しました。
⑮テレビ朝日アナウンス部「アナウンサーの話し方教室」角川Oneテーマ新書2003
アナウンス教室で使われている練習課題がいくつか掲載されていました。
そのひとつ天気予報の原稿を実際読んでみると、これが結構難しい。
天気予報も侮れんと思いました。
⑯船川淳志「ロジカル・リスニング」ダイヤモンド社2006
聞く技術全般について網羅的に解説した本です。
ファイティングスタイル(ケンカ腰)の相手への対応方法など、たいへん参考になりました。
⑰イーサン・M・ラジエル、ポール・N・フリガ(嶋本恵美・上浦倫人)「マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック」ソフトバンク文庫2006
マッキンゼー本のひとつです。
項目を全部挙げましたという感じですので、インデックスとして使うには便利そうです。
⑱野口吉昭・他「コミュニケーションのノウハウ・ドゥハウ」PHP2005
コミュニケーション力とは人間力・論理力・対話力の総合力だという内容です。
各能力の診断テストがあったので、さっそくやってみたところ好成績だったので非常に嬉しかったです。
単に自己評価が甘いということかもしれませんが。
⑲辻政信「潜行三千里」毎日ワンズ2008
旧日本陸軍・大本営参謀・辻政信。
終戦と同時に軍を離脱、3年間アジアに潜伏し、帰国。
その後、国会議員にトップ当選。
休会中アジア旅行に旅立ったまま失踪。どっかで殺されたらしい。
という、まさに波乱万丈な人です。
その人がアジア潜伏中の様子を綴った日記風エッセイがこれ。
発売当初、大ベストセラーになったそうです。
選挙に勝ったのもこの本のおかげといわれています。
確かに、これ読むとファンになっちゃいそうです。
生命力とか生き残り能力とか、完全にジェームスボンドを超えてますね。
結局この人は、参謀なんかではなく、工作員やってもらったら日本にとって一番良かったと思います。
読んだのは2008年版ですが、2009年印刷分から内容増補版になっています。
そのうち、それも読んでみたいと思います。
⑳境野勝悟「道元『禅』の言葉」知的生き方文庫
道元の言葉を100個選んで、解説を加えた本です。
いうまでもなく含蓄深いです。
個人的には問題山積しており、のんびりしてる場合ではないのですが、相変わらずのんびりしちゃってます。いけません。汗が。
今月は23冊!
■500冊カウントダウンは:★残り88冊!★
(読書生活 通算412冊+コミック38冊)
<おすすめ>
★世阿弥・訳注:野上豊一郎、西尾実「風姿家伝」岩波文庫1958
別名「花伝書」といわれる、能の秘伝書です。
その内容は、年代別修行法、演技のコツ、舞台進行の方法など多岐に渡ります。
結局、能の世界にも特別なコツなどない、あたりまえのことを愚直にやれ、それが世阿弥のメッセージだと思います。名人にそういってもらうと、すっきりしますね。
必読の書物、と思います。
★鈴木真哉「謎とき日本合戦史」講談社現代新書2001
戦国時代の合戦エピソードをまとめた本か?と思いきや、そうではない。
旧日本軍がなぜ「肉弾戦」「白兵戦」を重視(あるいはその威力を妄信)するに至ったか軍忠状などの信憑性の高い資料をもとに解き明かした本です。非常に面白い。資料価値も大。
タイトルのせいでしょうか、絶版しているようです。もったいない。
★高橋昭男「仕事文をみがく」岩波新書2002
練習問題がたくさん収録されているのがよいです。
文章の削り方=主題の捉え方については、「日本語練習帳」以上に勉強になりました。
<まあまあ>
①加藤尚武「ジョークの哲学」講談社現代新書1987
ジョーク集です。
②守屋洋「『為政三部書』講義」PHP文庫1989
為政三部書(三事忠告)というのは、いわゆる帝王学系の本です。
廟堂、風憲、牧民の三部から構成されていることから三部書といわれています。
貞観政要を参考にしているようで、よく似た話がでてきます。
③アラン&バーバラ・ピーズ「嘘つき男と泣き虫女」主婦の友社2004
「話を聞かない男・地図を読めない女」の続編です。女の評価システムの話など、またしても目から鱗の内容です。
④辻井重男「暗号と情報社会」文春文庫1999
共通鍵・公開鍵の解説、暗号の歴史など。
⑤福田和也「乃木希典」文春文庫2007
乃木希典といえば東郷平八郎と並ぶ日露戦争のスーパースター。
しかし実際の乃木は、軍人としての勇ましいイメージとは裏腹に、繊細で感受性の強い男でした。乃木は生涯、そのギャップを自覚するがゆえに、理想の軍人足らんことを極端に追い求めていきます。
そのストイックな生き方は多くの日本人から賞賛され、やがては軍神として祭り上げられていきます。それは乃木に一時的な満足を与える一方、乃木の内面と外面のギャップをますます広げ、乃木の精神を追いつめて行きます。
乃木にとって「理想の軍人」とはどういうものだったのか。なぜそこまでストイックに生きねばならなかったのか。そしてなぜ明治天皇に殉死する必要があったのか。
本書はその秘密に迫ります。
⑥津本陽「戦国武将に学ぶ情報戦略」角川文庫1998
戦国三英傑、信長・秀吉・家康の戦略について書かれています。
⑦鎌田茂雄「禅とはなにか」講談社学術文庫1979
著者の禅体験を紹介しつつ、禅の基本思想について非常に分かりやすく解説しています。
⑧山口仲美「日本語の歴史」岩波新書2006
上代特殊仮名遣い、八母音説など古代日本語について解説しています。
特に、平安時代の「係り結び」と現代語の「格助詞」の関係については、「あつ、そういうことだったのね」と積年の胸のつかえが取れるような内容でした。たいへん勉強になりました。
⑨平泉澄「物語日本史(上)」講談社学術文庫1979
⑩平泉澄「物語日本史(中)」講談社学術文庫1979
⑪平泉澄「物語日本史(下)」講談社学術文庫1979
著者の平泉澄は皇国史観学者のトップスター。戦前戦中、この人の著書は士官学校のテキストに使われるなど、広く読まれました。
戦後は、戦犯にならなかったものの東大教授の座は追われ、自宅謹慎したわけです。それが、講和条約成立・GHQ撤収にともない活動を再開。小学生や中学生に皇国史観的日本史を講演して回ったそうです。
この本はその講演録をまとめたもののようです。文章は平易で非常に分かりやすいです。
皇国史観とか国体とか、今までもうひとつピンと来なかったのですが、これを読んでようやく分かりました。
⑫岡崎久彦「小村寿太郎とその時代」PHP文庫2003
日露戦争関係です。
最近この関係に力を入れております。
小村寿太郎は日露戦争の総合プロデューサーです。いちおう日本を勝利に導きました。
ところが戦後処理、特に中国からアメリカを締め出したことについては、大東亜戦争を招いた原因ともいわれて非常に評判が悪い。
この著者(元外交官)もそう指摘しています。
それにしても、なぜ小村はアメリカを排除したのか? この分野、疑問が尽きません。
⑬小谷賢「日本軍のインテリジェンス」講談社選書メチエ2007
ミッドウエイ海戦での大失敗など海軍のインテリジェンスはさっぱりダメですが、陸軍はアメリカの暗号もしっかり解読してたりと、結構頑張っていたようです。
ただ、惜しむらくは、それを活用できる体制になっていなかったこと。宝の持ち腐れだったのですね。
その状態は残念ながら現在も続いている。
きわめて残念です。
それから、ソ連暗号の解析をするため、戦時中、東欧や北欧と協力していたとは知りませんでした。
⑭萩谷雅和・柳沢祟仁・松江協子「あなたを護る反論術」NHK出版2004
著者のみなさんは弁護士さんです。
日常ありがちな言いがかりや詐欺まがいへの対処方法を解説しています。
弁護士ならでは視点・発想に感心しました。
⑮テレビ朝日アナウンス部「アナウンサーの話し方教室」角川Oneテーマ新書2003
アナウンス教室で使われている練習課題がいくつか掲載されていました。
そのひとつ天気予報の原稿を実際読んでみると、これが結構難しい。
天気予報も侮れんと思いました。
⑯船川淳志「ロジカル・リスニング」ダイヤモンド社2006
聞く技術全般について網羅的に解説した本です。
ファイティングスタイル(ケンカ腰)の相手への対応方法など、たいへん参考になりました。
⑰イーサン・M・ラジエル、ポール・N・フリガ(嶋本恵美・上浦倫人)「マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック」ソフトバンク文庫2006
マッキンゼー本のひとつです。
項目を全部挙げましたという感じですので、インデックスとして使うには便利そうです。
⑱野口吉昭・他「コミュニケーションのノウハウ・ドゥハウ」PHP2005
コミュニケーション力とは人間力・論理力・対話力の総合力だという内容です。
各能力の診断テストがあったので、さっそくやってみたところ好成績だったので非常に嬉しかったです。
単に自己評価が甘いということかもしれませんが。
⑲辻政信「潜行三千里」毎日ワンズ2008
旧日本陸軍・大本営参謀・辻政信。
終戦と同時に軍を離脱、3年間アジアに潜伏し、帰国。
その後、国会議員にトップ当選。
休会中アジア旅行に旅立ったまま失踪。どっかで殺されたらしい。
という、まさに波乱万丈な人です。
その人がアジア潜伏中の様子を綴った日記風エッセイがこれ。
発売当初、大ベストセラーになったそうです。
選挙に勝ったのもこの本のおかげといわれています。
確かに、これ読むとファンになっちゃいそうです。
生命力とか生き残り能力とか、完全にジェームスボンドを超えてますね。
結局この人は、参謀なんかではなく、工作員やってもらったら日本にとって一番良かったと思います。
読んだのは2008年版ですが、2009年印刷分から内容増補版になっています。
そのうち、それも読んでみたいと思います。
⑳境野勝悟「道元『禅』の言葉」知的生き方文庫
道元の言葉を100個選んで、解説を加えた本です。
いうまでもなく含蓄深いです。
コメント