サッカー岡田監督講演会 in 総持寺(11月11日)

(ようやく書き終わりました。遅くなり、すみません)

岡田監督の講演を聞いてきました。













































★講演内容

■指導者としての限界を感じる

(最初の)代表監督を辞めた後のJリーグでは、正直、簡単に勝てた。

理論的指導はもともと得意。
動き方を教えて納得させるのに大して手間はかからなかった。

しかしある日、教えたことが表面的に理解されていると知り、愕然とする。
選手たちが状況と関係なく、機械的に動いてしまうのである。

自分はいったい何を教えていたのか?

大いに悩んだ。

ヒントをつかもうと、いろいろなことに手を出した。
まず本を読み漁った。経営学から占いまで、とにかくなんでも読んでみた。
セミナーにもたくさん通った。
心理学も勉強してみた。
武道もやった。

悪戦苦闘は今も続いている。


■座禅との出会い

そうしたなか、座禅と出会った。
以来、毎日欠かさず、遠征先でも座禅を組んでいる。
やり終えると、心が洗われたような気がする。

できるだけお寺や禅堂でやらせてもらうようにしている。
家やホテルでやるより、気持ちいい。


■子どもたちのこと

三人いる。
長男と長女はすでに独立。
この二人は、私に全然金がない時代に生まれ育った。

そのころは、遠征費にも事欠き、サラ金で借金しながら出かけている状況だった。
子どもに物質的な豊かさなど与えられるはずが無い。
しかしこの子たちは、しっかり成長してくれた。

三人目の子供。次男。
この子が物心ついたときは生活も安定していた。物質的には一番恵まれていた子どもである。
習い事もたくさんやらせた。
しかし結局、一番弱く育ててしまった。
現在二浪中。
どうしたらよいか悩んでいる。


■二度目の代表監督

一度目の監督時代、さんざん叩かれた。
二度とやりたくない。そう思っていた。

ところが突然オシムが倒れ、会長に呼び出しを受けた。
途中からの登板。あまりにリスクが高い。
頭では断ろうとと考えていた。


しかし、頭で考えていることと裏腹に、心では受ける気になっていた。
どこかに、一度目の雪辱を果たしたいという気持ちがあったのかもしれない。



■プレッシャー

ワールドカップでは、どんな優秀な選手も必ずプレッシャーを感じる。

試合の直前、中心選手たちの様子がおかしくなった。
代えの利かない選出たちである。
監督には何もできない。

彼らは自分で乗り越えてくれた。


■強豪とやれるのはワールドカップだけ


日本チームの場合、強豪との対戦経験は、ワールドカップでしか得られない。
親善試合では、相手が本気を出していないからだ。
日本にとって非常に不利な点である。

サッカーで一番大事なのは、ボール際の勝負。
簡単にボールを奪われるようでは勝てない。
当たり負けしないよう、選手の体幹を十分鍛えてきた。
それでも本番ではなかなか当たれない。
経験とか自信が不足しているからだろう。
今後の課題である。



■ワールドカップ直前のフォーメーション変更

日韓戦の後、中盤を増やした。
報道では、「突然の決断」のように言われたが、そうではない。
1月から準備していた形である。

作戦は数限りなく検討している。ホワイトボードの上で。
何かひらいめたときは、たとえ夜中であってもコーチたちを叩き起こす。
すぐ来れないようなら、即クビである。

レギュラーの入れ替えを行った。
選手本人や、その家族のことを考えれば、つらいに決まっている。
恨まれたいはずもない。

しかし情に流される訳にはいかない。
勝つために最善をつくす。何と言われようと決断する。
それが監督の責任だ。

外した選手たちも裏に回ってチームに貢献してくれた。
本当に感謝している。


■決断

最後は勘。開き直るしかない。
無心の時は当たる。
損得勘定が入るとダメ。

どん底を知ると腹が据わる。


■勝てるときの状態=ZONEに入る

自然に選手たちの体が動いて、気がついたら勝っていたということがある。
いわゆるIn the zoneとかFlowという状態。

どうしたらその状態に持っていけるか。

遺伝子にスイッチを入れるための秘密の鍵があると思う。

探し続けている
世界中のサッカー指導者が探している。


■生きる力を育てる

生きる力が強くなくては、スイッチは入らない。

しかし現代は、生きる力を弱くしてしまう。
便利で豊かで快適だから。

芝生を丹精するときと同じ。
世話をしすぎると枯れたふりをする。根も下ろさない。
ところが、水や肥料を与えないとしっかり根を下ろす。強い芝生になる。

苦しいことに耐えること。
目標と夢を持って、チャレンジすること。
それが脳幹への刺激になる。そして生きる力を鍛える。


■文化は豊かさの産物ではない

文化は豊かさの産物だと思っていた。

しかし最近、そうではないと思うようになった。

音楽も、もとは信号だった。
仲間に危険を知らせるための、緊急信号。
それが発展し、音楽になった。


スポーツも元は狩り。
獣を追いかける動きから発展したものである。



■Dream Killer

必ずこういうことをいう選手がいる。

無理に決まってる。
育ててくれない。
教えてくれない。
変えてくれない。

自分で自分をつぶしている。



■ワールドカップチームがひとつになれた秘訣

どういうシステムで運営しているのか?
何度も聞かれた。

システムなどない。


ただ、コミュニケーションが良かった。
それだけである。
選手もスタッフも全員がベスト4という目標を共有していた。
必要なことは何でも考えて話し合った。


言われたことだけやる、聞かれたにことだけ答える、
そういう者はひとりもいなかった。
たとえばコックさん。
彼も回想録でコミュニケーションが良かったと書いてくれてるが、
選手の食欲に少しでも異常があれば、すぐに知らせてくれた。
そして対応してくれた。


■コミュニケーションが悪いとどうなるか。

「水の入った酒」という話がある。

貧しい村で祭りをやることになった。
せっかくの祭りだから、みんな酒を飲みたい。
しかし村には樽酒を買うような金はない。

そこでみんなで酒を一枡ずつ持ち寄り、樽に入れることにした。
予定通りその樽はいっぱいになった。

村人たちは喜んで、さっそく樽の酒をみんなに配って乾杯することにした。
ところが、口をつけてびっくり。
水だったのである。

自分ひとりぐらいずるして、水をもっていっても大丈夫。
全員がそう考えてしまったのである。

コミュニケーションの悪いチームでは、こういうことが起こる。


■教育とは?

私は、長い間、教育とは「空のコップに水を入れる」ようなことだと思っていた。

しかしこれはまったくの勘違いだと思う。

教育=Educationの語源は、「引き出すこと」である。
つまり教育とは、本来そなわっている力を最大限引っ張り出してやることだと思う。

そのためにはやさしいだけではだめ。
緊張感も必要だと思う。



◆講演終了後、精進料理をいただきました。(お味は。。。)
で、お寺の見学。
たいへん有意義な一日。

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