中沢新一「三万年の死の教え」角川ソフィア文庫1996

チベットの「死者の書(バルド・トドゥル)」およびその世界観について解説した本です。
カタカナ語(チベット語)が多くて、ちょっと読みづらかったですが、たいへん勉強になりました。

バルド・トドゥルは、1927年にオックスフォード出版局から英語翻訳版が出たことで世界的に知られることになったチベット仏教の経典とういかガイドブックのようなもので、要するに、死にかけている人に、あの世で の処し方みたいなことを伝えるメッセージが書いてあるものです。

この書が使われている地域では、臨終間際の人がいると僧侶が呼ばれ、その内容を読んでもらいます。書のタイトルにある「トドゥル」は「耳で聞いて解脱する」という意味で、これは、人間の感覚器官の中で聴覚が最後まで生きているという信念からきているそうです。

一方「バルド」というのは、中間とか途中という意味だそうで、要するに存在を表しています。存在論というのは、世界中の哲学において中心的テーマですが、チベット仏教ではそれを「中間とか途中」と説明しているわけです(ちなみにバルドの期間が四十九日)。


これはもちろんそれまでの西洋哲学とはまったく異なる発想です。20世紀の西洋哲学では、要するに「存在イコール言語」で、ラカンの言葉でいくと「無意識は言語として構造化されている」という発想です。これに対して、チベット仏教(というか仏教全般)では「言語の外部にも存在はある」といってるわけで、西洋人にはものすごいインパクトがあったわけですね。

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