考える力

太公望(呂尚)という名前、皆さんも聞いたことあると思います。
周王朝建国に大活躍した政治家です。
「史記」によると、この人が周(当時は諸侯の一つ)
にヘッドハンティングされたのは、なんと80歳の時!?だったと。
ほんとはもう少し若かった気もしますが、
それにしても、年寄りルーキーだったのは間違いなさそうです。
それまでは漁師です。どこにも仕官していない。
それが突然、大抜擢されたわけですね。

太公望の事跡を見ると、今パッとしないけど、まだまだガンバロウ!という気になりますね。簡単に諦めてはいかんのです。

太公望は、主に「謀略」担当だったようです。

「謀略」というと日本では非常に悪いイメージがありますが、これは徳川幕府が「情報機関」を独占するために行った思想教育=情報分析とか諜報活動は卑怯卑劣な行為、の影響によるものです。
それが今も日本人を呪縛し、国際交渉での不利につながっているのです。
まあそれはよいとして。
とにかく、国際的に見れば「謀略」にそれほど悪辣なイメージはなく、むしろ「頭脳プレイのグッドジョブ!」と認識されているようです。
だからジェームス・ボンドとかイーサン(トム・クルーズ)はヒーローなのですね。

そもそも「謀」とはどういうことか。
太公望は「六韜」(後世の偽作と言われていますが、それはよいとして)の中で
「困難な問題を解決すること」と語っています。
高級官僚を選ぶときは、必ず「謀力」のテストが必要だ、とも言っています。

「謀力」は、どうしたらつくのか。
ビジネス書を見ると、実践的?な方法がいくつも紹介されています。
たとえば、
「なぜできないのか」と、原因を考えるのではなく、
「どうしたらできるか」と、できる方法を考えよ、みたいな話です。
もちろんこういう方法にも役立つ点は多々あります。
どんどん取り入たらよい。

しかしそれだけでは、不十分だと思います。
基礎力がつかないからです。

ではどうするか。
「諦めないで考え続ける」。これに尽きると思います。

太公望は80歳になるまで、ひたすら「政治」とか「軍事」とかを考え続けた。
その力を発揮する場所もないのに。
そして、チャンスを掴んだ。
「考え続ける力」こそが、太公望の最大の能力だったわけです。

「諦めないで考え続ける」って、意外とたいへんです。
我々はあまりにも「答えのある問題」に慣れきっているからです。
「答えられない問題」に遭遇すると、すぐに「答え」を誰かに教えてもらおうとする。教えてもらえなければ「解決不可能」と放置してしまう。
自分で答えに辿り着こうとはしない。

誰かが答を知っている問題なんて、しょせん「レベルの低い問題」でしかないです。
そんなものに、いくつ答えを出しても「謀力」とは言えない。
にもかかわらず、自分は「問題解決力がある」なんて錯覚していることが多いのですね。

かくいう私も「諦めないで考え続ける」ことの重要性を認識したのは、つい1年半ほど前でした。F大佐からの薫陶です。


さて最後に、無門関です。

第五 香嚴上樹 ‐香嚴樹に上る‐
香嚴和尚云く、「人の樹に上るが如し。口は樹枝を啣み、手は枝を攀じず、脚は樹を踏まず。樹下に人有って西來意を問わんに、對えずんばち他の所問に違く、若し對うれば又た喪身失命せん。正恁麼の時、作麼生か對えん。」

「答えがない」究極的な状況です。
そこで「答えを探す」。
それが、「謀力」すなわち「考える力」につながる。

いかがでしょうか?

コメント

鴨のテオクリート さんのコメント…
太公望のコメントがコミュニケーションツールに入ってしまいました。場所を変えておいてください。FireFoxではコメントを受け付けませんね。

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