マルクス エンゲルス「共産党宣言」岩波文庫1951
トマ・ピケティの「21世紀の資本」という難解な本が、日本を含め世界的に売れていて、特にアメリカではベストセラーだそうですが、その帯を見ると「新・資本論」と書いてあります。
ピケティの理論は「r(資本収益率)>g(経済成長率)」 という公式に集約されておりまして、要するに労働者がどんだけ稼いでも、資本家が寝ている間に稼ぐ金には追いつかないという話であります。
これは、マルクスとエンゲルスが唱えた、プロレタリアが働けば働くほど、ブルジョアのもとに資本が蓄積され、ブルジョアとプロレタリアの格差(力の差)が拡大していくという話と、たいへん似ているために「新・資本論」なんていわれているのだと思います。
共産党宣言は、有名なこのフレーズからはじまります。
「今日まであらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である」
共産主義が問題にする階級というのは、いうまでもなくブルジョアとプロレタリアです。
ブルジョアとは、社会的生産の諸手段の所有者にして賃金労働者の雇用者。プロレタリアは、自分自身の生産手段をもたないので、生きるためには自分の労働力を売ることをしいられる近代労働者と定義されています。
共産主義というのは要するに、歴史上繰り返されてきたこの血なまぐさい階級闘争を二度と繰り返さない社会を実現したい、というモチベーションをもとに発生した思想です。
その実現手段は一口にいうと、所有を放棄すること。自由競争もやらない。
そもそもブルジョアが存在しないようにしちゃおうという話ですね。
第二章には、もう少し具体的な方策が10個ほど提示されておりまして、ざっくりいうと、公共的資本(運輸とか銀行とか)の国有化、自由競争の制限、個人財産に対して強度の累進課税することで富をきちんと再分配しようてな項目があがっています。
結果的に、戦後の経済や科学技術の発展度合いということで見ると、共産主義は自由主義に打ち負かされたわけで(原理的に発展をセーブするのだから当然ですが)、机上の空論だぜといえなくもない。しかし、自由競争だけしとけば、みんなハッピーになるのか?と考えると、どうもそうは思えない。結局、適度に競争が抑制されている社会というのが一番いいのだろうな、それって結局80年代以前の日本ではないのかと思います。
ピケティの理論は、共産主義(マルクスの資本論)とは直接関係ないようですが、格差解消を強く唱えていて、その有力な手段として共産党宣言で述べら得ているのと同じ方法、つまり「累進税の強化」を提起しています。
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