読書生活2009年1月号 (書きかけ)

<今月のおすすめ>
①金田一春彦「日本人の言語表現」講談社現代新書1975
著者の解説によると、岩波新書の「日本語」は日本語のラングの特色を、この本はパロールの性格を考えたものと言ってよい、とのことである。
東郷平八郎の電報指令、菊池寛の逸話など、かなり内容豊富。
残念ながら絶版。



②豊田正子「新編綴方教室」岩波文庫1995
貧しい職人家庭の娘、豊田正子。
その彼女が小学4、5年のときに書いた作文を集めて出版されたのが「綴方教室」である。
この本は1937年に発刊され、70万部を超えるベストセラーになった。映画もされた。
しかし豊田正子には1銭の印税も入らなかった。

なぜか。
指導教師の大木顕一郎、清水幸治、そして中央公論に掠め取られたからである。
「赤い鳥」主催者の鈴木三重吉の懐にも多少は入ったのかもしれない。
困窮をきわめる原作者には一銭の金も入らなかった。

大木や清水は少女、正子にせっせと作文を書かせた。
大恐慌の影響で困窮を極める一家の悲惨な生活状況を「もっと詳しく」「もっと素直に」、そして「もっとみじめにと」と。
人権侵害である。サディストである。
大木は「自分のおかげで正子は文章が書けるようになった」と臆面なく主張する。
その上、正子の文章を評して「いささか浅ましい」だの「この種の家庭の」などという差別表現を連発する。盗人猛々しいとはこのことである。

この大木や清水たちが熱心に進めた作文指導こそが、「赤い鳥運動」なのだ。
現在も日本の国語教育に大きな禍根を残している。

結局「赤い鳥運動」とは何だったのか。
大木の解説文を読むと、その偽善と欺瞞が浮き彫りになる。
簡単にいうと「教師が読みたい(子供らしくて無邪気な)文章を書かせる教育」である。
つまりは子供たちをインテリ教師の慰み者にする、という話である。
年端のいかない子供に、ろくな指導も行わず、「思ったように」「書きたいように」「活き活きと」書きなさいという。もっと悲しく、もっとみじめに書けというのである。
そうやって貧しい家の子供たちを陰で嘲笑し、蔑むのである。
未だに日本の国語教育は「赤い鳥運動」の呪縛から脱していない。
なさけない。



③佐藤優「日米開戦の真実 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く」小学館2006
大川周明というのは、東京裁判で東条英機の頭をはたいている、あのおじさんである。
裁判の途中で精神錯乱状態になったが、後に回復。戦後はイスラム教の研究に没頭。日本ではじめてコーラン(クルラン)の全訳を出版している。

GHQ主導で進められた戦後教育では、日米開戦の原因は軍部の暴走ということになっている。
それが本当なのか。
米英東亜侵略史は、開戦直後にNHKラジオで全国民に向けて放送された内容を本にしたもの。
かなり高尚な内容であるにもかかわず当時10万部を超すベストセラーになったそうである。


<まあまあ>
①「春秋左氏伝」〈上〉 訳:小倉芳彦 岩波文庫1988
孔子が魯の公式文書を抜粋編集して作成したのが「春秋」である。
紀元前722年から紀元前591年までの春秋戦国時代のできごとを時系列的に記述している。(編年体)
いわゆる経書のひとつ。
それだけだと、何のことかさっぱり分からんので注釈を加えたものが誕生。
それが「春秋左氏伝」である。
森鴎外も愛読したそうである。

②「春秋左氏伝」〈中〉 訳:小倉芳彦 岩波文庫1989
上巻は、ものすごい勢いで話が進んでいくが、中巻から、一気に伝(解説)が増える。
その分、読みやすい。
弁舌の達人、子産。崔氏、慶氏の反乱など。有名なエピソードを収録。
「食い物のうらみ」と「女性問題」が多いのに驚く。

③「アメリカの黒人演説集―キング・マルコムX・モリスン他」 訳:荒 このみ 岩波文庫2008
黒人差別がいちおう法律的になくなったのは、1965年である。
ついこの間です。
それまで300年以上、黒人は酷い目にあったわけである。
その様子がよく分かる。
M.L.キングJrのI have a dream
マルコムXの投票権か弾丸か。
オバマのノックス・カレッジ卒業式演説
などを収録。


④中村 文昭 「お金でなく、人のご縁ででっかく生きろ!」 サンマーク 2003
⑤サミュエル・P. ハンチントン「文明の衝突と21世紀の日本 」 集英社新書2000
⑥向坂 寛「恥の構造―日本文化の深層」講談社現代新書1982
⑦ルイス・キャロル「不思議の国の論理学」筑摩学芸文庫2005
⑧柳生宗矩「兵法家伝書」岩波文庫2003
⑨田母神 俊雄「自らの身は顧みず」 ワック 2008

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