国民読書年 記念講演会 6月23日

安藤忠雄、外山滋比古、田中眞紀子などの話を聞いてきました。1830開演。日本プレスセンタービル。

さすが政府系のイベント。この豪華メンバーで、入場料無料。300人ぐらい来てたと思います。
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■主催者あいさつ
肥田美代子氏。文字・活字文化推進機構理事長、社会党→民主党の元国会議員(現在は引退)。講演者の紹介などを行い5分ほどで終了。


■基調講演。「私を変えた本」というタイトルで安藤忠雄氏。
ご存知、世界的建築家です。大阪府立工業高校出身。元東京大学教授。
安藤先生は高校卒業後、神戸地下街の建設現場で働いていたそうです。

そこで、神戸新聞の社長と知り合い、「安藤くん、本よんでるか?」と尋ねられ「建築の本は読んでますけど、文学とかはまったく読んでません」と答えた。
すると社長は「それではあかん、よい建築家になりたかったら教養高めんと。まずこれ読んでみなさい」と、吉川英治の「宮本武蔵」を渡されたそうです。
それがきっかけとなり、建築以外の本も読むようになったと。
でも初めのうちはあまり面白いと思わなかったそうです。
建築は「視覚的な文化」で、本は「思考的な文化」ですから、相容れない感じがしたからだと。
それでもだんだん面白くなってきて、40過ぎてからは古典なども読むように。
どうせなら、もっと若いときから読んどけばよかったと、今は後悔されてるそうです。(まったく同感)
しかしそれでも読んだからこそ、司馬遼太郎記念館などにつながったわけですね。
幸田露伴の「五重塔」を建築の本と間違えて読んでいた、など面白いエピソードも紹介されていました。

15分ぴたりで終了。いきなり、という感じもありましたが、(なにがなんでも)時間通り終わるというのは流石一流です。これから大阪に戻られるとのことでした。


■対談「言葉の力、読書の力」。田中眞紀子氏、外山滋比古氏
田中氏はご存知政治家。外山先生は大ベストセラー「思考の整理学」の著者ですね。

田中氏がネタふりをして、外山氏が答えるという形で進行。

外山先生はご高齢ですので、フィジカル的にはヨロヨロという感じでしたが、頭脳はまったく衰えていらっしゃらないご様子でした。ちょっと話が長かったですが、おっしゃてることは非常にハッキリしておりましたし情報密度も濃い。こんな話が出てました。

・知識を整理せよ。
知識を詰め込みすぎている人は、たまに自分の知識を見直して取捨選択するということが必要。詰め込みすぎると何が何やら訳が分からなくなるから。
但し、知識不足の人がこれをやると、何もなくなるので注意。(爆笑)

・現代は「わからないものがない」という時代である。
昔は何もかも分からないことだらけで、わからないほうが普通だった。
しかし現代は、なんでもわかるという時代である。
それが、わかりにくいものは良くない、取り組みたくないという風潮につながっているように感じる。本も難解なものは売れなくなった。
しかし、わかる本を読んでも、実はあまり意味がない。わからない本を読むから知識が増えるのである。
わからないもの取り組む、という文化を復活させたい。

・音読はあとで効いてくる。
論語読みの論語知らずという言葉があるように、声に出して読めるからといって、内容が理解できているとは限らない。だから、学習効果の点では、黙読の方が有利である。
しかし、音読していたことは、あとになって、「あー、これはこういうことか」と突然わかることがある。無意識のうちに記憶に残っているからだろう。こういう記憶も馬鹿にできない。そういう意味では音読にも意義があると思う。

・三歳までの言語教育を充実させよ。
三歳までは、ほとんどの人間は天才である。
この時期にふれた言葉が、その後の言語能力を大きく左右する。
バイリンガル教育なども意味はあるかもしれないが、それよりも正しく・美しい日本語にふれさせた方がよいと思う。その際、母親や家族が語る言葉が重要である。テレビの悪影響は深刻。教育学では幼児教育がもっとも遅れている。発展が待たれる。

・本はなくならない。
iPadやキンドルの登場で、本がなくなるのでは、という意見もある。
(田中氏から経済産業省が全国の小学校に電子書籍を配布する計画を進めているとのつっこみあり。田中氏は反対のようである)
時計でも同じ話があった。
デジタル時計が登場したとき、もうアナログはなくなるという意見が大勢をしめたものである。ところが結果はどうか。結局アナログが主流にもどった。時間を調べるという点では、アナログの方が何倍も面倒なのに。本も同じではないか。なることはないと思う。
しかし、デジタル書籍にもいいことがある。読者を増やす可能性があるからである。
それによって新たな文字文化が発展することを期待する。

・ことばで表現できることは限られている。
ことばで表現できることは、いいたいことのせいぜい何分の一かである。
だからこそ、表現力を高めるために、ことばを磨く必要がある。
その一方、ことばだけに頼るということも避けたほうがよい。

・日本語はもっと論理的にならなければならない。
日本語は、感情的な内容を表現することについては極めて優秀な言語であるが、論理的なことを表現することについては西洋言語(特にドイツ語など)に比べると劣っている。
その原因は、日本語が「センテンス駆動」だからである。これに対して西洋言語はパラグラフ駆動である。
日本語の長所を活かしつつ、欠点を修正する方法を考えて行かなければならないが、寺田寅彦以降、進展がない。今後の課題である。


この対談の内容は、別途、書籍化されるそうです。
楽しみです。

対談の最中、田中氏のネタふりがよく分からないと、外山先生は平気で、「それで?」とか「なにが?」と聞いておられました。田中眞紀子相手にそういうこと言えるのは貫禄ですね。面白かったです。

コメント

匿名 さんのコメント…
ご無沙汰しております。
Hanover Square でも大変お世話になりました○○です。(LONSSG)
このたびB○Zから(ふたたび)I○Zに異動になりました。連絡先がわからないので、ご連絡できませんが、firstname.lastname@xxx.com まで、ぜひご一報ください。
近々、のみにでもご一緒ください。

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