香山リカ「なぜ日本人は劣化したか」講談社現代新書2007。

いろいろな面で日本人(実は外国も同じだけど)の能力が劣化しているとの御指摘。
劣化は個人の知力・体力・モラルのみならず、社会全体とか文化のレベルでも進行してると。
いちいちごもっとも、日ごろ感じてることと合致します。

その原因、著者によると新自由主義的発想の蔓延なのだそうです。
なんでもかんでも損得勘定に還元するという姿勢は、一見ものすごく頭良さげに見えますが、実は無脳化の追求であって、究極的には人間の否定です。計算機さまを社長にしたらいいでしょうてことになる。それはMatrixとかTerminaterとか銀河鉄道999に描かれた人間が機械に支配される世の中です。日本の経営者はデータを見てない、てなIT屋が大好きなフレーズは一面の真理であるものの、じゃあデータだけ見てる経営者はエライのか？とか、直観よりデータを信じたほうが本当に成功率高いのか？とか言うと途端に雲行きが怪しくなるし、実際問題、データにしがみついてるよな経営者に私は魅力を感じませんね。失敗するに決まってるからです。

というわけで、ハイエク的新自由主義が様々な弊害をもたらすという点には全く賛成で、その権化たる小泉・竹中路線も大キライだと繰り返しいろんなところで私も言ってきました。でもね、それが劣化の原因と言われると、そうかなあ？と思ってしまいます。市場原理の追求をやめたら解決する、なんてふうには思えんからです。じゃあなんだ、と言われると、困るんですが、私はもっとプリミティブな原因があるんじゃないかと思っています。生物的な。