読書生活2011年9月号

つづけて9月分です。

<2011年9月号>
■佐藤信夫「レトリック感覚」講談社学術文庫1992。19世紀まで西洋の読書階級の必修科目だったレトリック。過度な形式化を招いたため廃れたが、実際の言語活動には今も息づいている。微妙な意図を明瞭に表現するための方法てのに納得。五十嵐力「文章講話」(国会図書館でDL)もちらと読み直し。
2011年9月4日

■前野直彬・注解「唐詩選」(上)(全3巻)岩波文庫1961。明末に編まれた詩集。「格調」重視で唐代の詩をセレクト。荻生徂徠が絶賛し日本でも大ヒット。懐古・送別・旅愁の詩が多い。で、作品自体はあまり楽しくないが、本としては注解が非常に充実しており、資料価値大。(上)は古詩のみ。
2011年9月5日

■アポロドーロス「ギリシャ神話」高津春繁・訳、岩波文庫1953。一般に流布してるものは恋愛小説風に脚色されてるが、これは原版に忠実らしい。逆にヒジョーに読みにくい。通読は断念して、トロイの木馬とかイカロスの翼とか知ってるとこ拾い読み。古事記もそうだが、これ明らかに人間の話だよな。
2011年9月6日

■中島孝志「巧みな質問ができる人できない人」三笠書房2001。お釈迦さまなら、どんな質問にもずばり答えてくれそうだが、実は「死後の世界はあるか?」なんてのには答えていない。そういうの全部で14個もある。ヴィドゲンシュタインもそれを真似たのでしょう。だめな質問の典型というわけです。
2011年9月7日

■新名美次「40カ国語習得法」ブルーバックス1994。著者はニューヨーク在住の眼科医(今も?)。早い話、言語オタクですね。語学学習に特別なノウハウはない。愚直に丸暗記するだけ。やっぱりね。ヘブライ語とかラテン語とかの解説もあり、資料価値大でした。
2011年9月9日

■塩野七生先生「日本人へ 国家と歴史篇」文春新書2010。前作同様塩野節全開。愚直に誠実にやる者と、小賢しく目先の利益を追求する者とでは、どっちが勝つか。短期には後者だが、10年単位で見ると前者が勝つ。ゲーム理論でも前から証明されてます。あらためて肝に銘じたいと思います。
2011年9月11日

■半田 滋「自衛隊vs.北朝鮮」新潮新書2003。自衛隊が作成してる半島有事の際の計画書を解説したもの。日本の備えは法的にも装備的にも体制的にも非常に貧弱。民間の協力を思いきり当てにしてるし。
2011年9月12日

■香西秀信「レトリックと詭弁」ちくま文庫2010。多問の虚偽・不当予断の問い。某元首相が多用してたの思い出す。プラトンは口の達者な者がのさばるとろくなことない、てのでアカデミアでも、有徳者にしか弁論術を教えなかった。ディベートだプレゼンだのに邁進する日本の教育どうなんですかな。
2011年9月18日

■明石康・NHK「サムライと英語」角川新書2004。「英語でしゃべらナイト」のスピンオフ。ペリーとの交渉にあたったオランダ語通詞・堀達之助の活躍。しびれます。多少は英語もいけるのにI can speak Dutch!とオランダ語での交渉を要求。そう英語しゃべる義理ないのです。
2011年9月18日

■オリヴィエ・ルブール(佐藤泰雄・訳)「レトリック」白水社2000。コンパクトだが、修辞だけでなく、日本人著書ではスルーされがちな発想や配置の解説がある。そっちに問題ある人の方が実は多いのですが。戦後国語教育では軽視してる。図書館で借りたが、資料価値大につき購入する予定。
2011年9月23日

■林望「知性の磨きかた」PHP新書1996。リンボー先生のちょっと前の著書。というか講義録。いつも通り軽快な文章。知性の磨きかたに画一的な方法なし。て話。まったく同感です。ただ、良い師にはついた方がよろしいと。よい師とは、後ろ姿で語ってくれるひと。なかなかいないけど。
2011年9月28日

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