読書生活2011年11月号


11月号です。

<2011年11月号>

■正岡子規「病牀六尺」岩波文庫1927。亡くなる二日前まで書き続けたエッセイ。世相評論みたいのも多く、悪徳職業紹介所の話なんか出てくる。そういうの見ると命じ明治も平成も大して変わらんなと思う。病気に苦しむ様子もダイレクトに書いてる。でも虚無感はない。生命力を感じる。
2011年11月3日

■井上寿一「戦前昭和の社会」講談社現代新書2011。非常に面白い。共産党が流行らなかったのは政府が弾圧したからてより民衆を見下した無思慮な言動を重ねたから。あと、カフェーの女給て、店と雇用契約なくて、客のチップだけが収入てのも初耳。格差の拡大、就職難。戦前と現在は驚くほど似てる。
2011年11月6日

■田之倉稔「モーツァルトの台本作家ーロレンツォ・ダ・ポンテの生涯」平凡社新書2010。「フィガロの結婚」などモの三大オペラを書いた人。ユダヤ人差別から逃れるためカソリックに改宗。聖職者目指すが、女遊びしすぎて追放。で作家。パトロンと仕事を求め欧州流転、晩年は米国ですごす。てな話。
2011年11月6日

■小林秀雄「考えるヒント(新装版)」文春文庫2004。昭和34年ごろに書かれたエッセイ。「批判家は直ぐ医者になりたがるが、批判精神はむしろ患者の側に生きている」確かに。「正義の歴史的社会的相対性という現代に広く普及した考え」こりゃ忘れられてますな。サンデル教授が流行る位ですから。
2011年11月6日

■岩浪由布子「祖父東条英機「一切語るなかれ」」文春文庫1995。東条英機の孫娘が書いた東条家の戦後史。想像以上に苦難の連続だったようです。東条英機は、昭和天皇にも、すごく信頼されてた真面目で優秀な官僚。政治家ではなかった。だから大胆な判断はできず、ズルズルてことなんだろなあと思う。
2011年11月8日

■岡本浩一「上達の法則」PHP新書2002。認知心理学的観点、特に「記憶」の観点から「上達」とは、どないな状態か、何したらそないなるのかを考察した本。上達するとチャンクサイズが大きくなるので、ワーキングメモリに余裕ができるて話は、納得。やっぱり「詰め込み教育」が有効なのです。
2011年11月11日

■森本哲郎「日本語 表と裏」新潮文庫1988。「虫がいい」とか「虫がすかない」とかの「虫」て言葉は古事記から来てるとのこと。なるほど。しかし花伝書の「秘すれば花」が奥ゆかしさの表れてのは??? まあいいけど。
2011年11月12日

■塩野七生「再び男たちへ」文春文庫1994。20年前ぐらいのエッセイだがまったく古さ感じない。繁栄を極めた国家が衰退するのは避けられない。興隆の要因が足枷になるから。とか、人材がいないからではなく、人材を活かす仕組みが機能しないから。ていう分析は、まったく同感。さすが先生。
2011年11月13日

■二宮清純「勝者の思考法」PHP新書2001。各種スポーツの例を引き合いに、勝因と敗因を分析した本。要するになりふり構わずやれることはなんでもやるてものが勝つて話です。ちんけな事に拘ってると負け。今話題の某オーナー、野球人気低迷の主犯てことでこっぴどく批判されてます。
2011年11月14日

■伊東明「「聞く技術」が人を動かす」光文社知恵の輪文庫2003。質問や会話の基本的技術を実例を交えて解説した本。コンパクトで便利。オープン・クローズていう分類は知ってたが、答えるのが簡単かどうかで、簡単なのを「想起質問」、ぱっと答えられんのを「処理質問」て呼ぶのは初めて知った。
2011年11月16日

■金武伸弥「新聞と現代日本語」文春新書2004。新聞のへんてこな用字・用例の背景に「国語表記の標準化進めたい」ていう理念があるのは認める。しかし「コスト削減のため」てのが実は大きかったわけで、そこを言わんのはどうかと思う。ともあれ、記者ハンドブックなみに情報満載で使える本ではある。
2011年11月20日

■栄沢幸二「「大東亜共栄圏」の思想」講談社現代新書1995。政治の混乱、経済の不振、格差の拡大て状況のなかで「非常時」という言葉のもとに異論反論が封殺されていった時代。「コストダウン」や「スタンダード」の名のもとに、成長や革新の芽まで無駄なものと捨てられる現在と酷似しているなと。
2011年11月20日

■築山節「脳と気持ちの整理術」NHK出版生活人新書2008。築山先生三部作のひとつ。嫌なことも必要で、それが無いと脳が怠けて退化する。4割は嫌なことでちょうど。とか。人間の脳は、選択肢が無限にあると「思考停止」に向かう。とか、超納得。若い衆に「自由に考えよ」なんてのはダメなんす。
2011年11月20日

■林望「知性の磨き方」PHP新書1996。もしかすると再読。リンボー先生のだいぶ前の著作です。知性てのは、世の中と「主体的」かつ「客観的認識を以て」交わること。まったく仰る通り。
2011年11月20日

■日垣隆「現代日本の問題集」講談社現代新書2004。久々にオーム報道があったけど、あの教祖に適用された共謀共同正犯てのは、日本独特の法律だと。やくざの親分をひっくくるためにできたそう。その他、医療費問題からイラク戦争までメッタ切り。過激で面白い本でした。
2011年11月22日

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