香山リカ「知らずに他人を傷つける人たち」ベスト新書2007
「モラルハラスメント(モラハラ)」について書いた本です。
モラハラということばが日本でも知られるようになったのは、1999年にフランスの女性精神科医、マリー=フランス・イルゴイエンヌの著書「モラルハラスメント−人を傷つけずにはいられない」が日本でも出版されたのがきっかけだそうです。
このことばの意味は、イルゴイエンヌ氏の定義によると「ことばや態度でくり返し相手を攻撃し、人格の尊厳を傷つける精神的暴力のこと」とのことだそうです。
そう聞くと、 パワハラと何が違うのか? と思いますが、権力的な背景がなくてもいやがらせをするというのが特徴だそうでして、特に最近の職場では、部下や後輩が上司や先輩をいじめる系の、たとえばこんな感じのが流行っているとか。
「部下の男性で、何かと私に仕事を押しつけようとする人がいるんです。最初は”それはあなたの仕事でしょう”とさりげなく断っていたのですが、そのうちまわりに”あの人は意地悪だ”とうわさを流していたみたいで・・・・・・。別の部署の人から”あなたも先輩なんだから、もっと後輩にやさしくしなきゃだめよ”と忠告された。(略)そのうち彼は、忘年会などの集まりがあっても私にだけ連絡しない、大事な書類を私をパスして上司にわたす、などもっとあからさまないやがらせをするようになった」
ひ〜、と思いますが、これに近いことって実際にあるなと思います。
こういうモラハラする人は、大体がずるがしこくて、自分の味方をしてくれそうな人の前では、ものすごく「いいやつ」を演じたりもしますしね。
この他、パワハラ的なものとか、「湊かなえ」の作品に出てきそうな、夫婦間や家族内のモラハラとか、ママ友の話とか、いろんな話が出てきて、読み進む内に、結局「モラハラって何?」とまたよく分からなくなるわけですが、ひとことでまとめると、この世の中は「いじめであふれている」という話でしょうかね。
ちなみに、モラハラ(というかいじめ一般)は、均一性の高い集団で起こりやすく、格差の大きい、たとえばITベンチャー企業みたいな、生き馬の目を抜く、給与格差が大きいみたいなところではかえって起こりにくいのだそうです。
この話を、今年就職活動を控えている大学3年の娘に教えてやったところ、めずらしく感心されました。
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