斎藤充功「昭和史発掘 幻の特務機関「ヤマ」」新潮新書2003

特務機関「ヤマ」は、戦前、戦中に主に国内の防諜活動(カウンターインテリジェンス)に従事した組織で、陸軍中野学校などで専門教育を受けた人や、大蔵省や外務省からの出向者などが在籍したそうです。
当時の日本には、これ以外にも憲兵隊やら特別高等警察やらいくつか諜報機関がありましたが「ヤマ」の存在は陸軍内部でも極秘にされておりライン上の責任者ですら詳細を知らされていなかったそうです。
(柳広司の小説「ジョーカーゲーム」に登場する「D機関」はこれがモデルかも)

そのため活動内容が表に出ることはありませんでしたが、実はゾルゲ事件の摘発にも大きく関っており、吉田茂の自宅に潜入していた人もここのスタッフだったようです。
「ヤマ」の東京本部には、次の5つの組織がありました。
・甲班:内外要人の監視、外国公館、ホテル等の監視
・乙班:内外電信・電話の盗聴・通信傍受(移動監視隊)
・丙班:内外郵便物の開緘、税関荷物の検査
・丁班:要監視者の荷物奪取、窃取
・戊班:スパイの謀殺・偵諜
なかなかハードインテリジェンスな組織です。
最後の戊班は「殺しのライセンス」を持った部隊。「ヤマ」がいかに権限を持っていたかわかります。


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