中島一「意思決定入門」日経文庫1990

2009年には改訂版(第二版)も出ているロングセラーです。古本屋に初版が出ていたのでゲット。
「入門」だけあって、物足りないところもありましたが全体的には大変勉強になりました。

◆意思決定を阻むもの
次の4つが挙げられていました。

①情報収集が十分ではない
これはまったくその通りと思います。
「案を出せ」と指示されて「案を出せないやつ」というのは「考えていない」以前にモノを調べてないことが多い。
そういう者に「もっと考えろ!」というのは大熱を出してる病人に「裸になって水浴びすれば熱が下がる」と指導するようなもので、かえって病状を悪化させる危険があります。
なので私はとにかく若い人には「知識を詰め込め」「外を出歩いて情報を集めてこい」と口を酸っぱくしていうわけですが、少々頭がいい者に限って思考力に頼って「情報力」を疎かにすることがあります。

②状況をよく分析していない
企業内では状況分析を欠いた過大な目標が一人歩きすることがよくあります。
たとえばなんの根拠もないのに「売り上げ50%アップ!を目指す」みたいなやつですね。
本書に状況分析を欠いた目的を「マザーフッド(お母さん)願望」と外国ではいうとありました。気になったので調べてたところ英語では「Unrealistic expectations of motherhood」というようです。お母さんが我が子の将来に対して「プロ野球選手になってほしい」とか「弁護士になってほしい」とか「医者になってほしい」とかいうあれですね。子供の能力をよく分析せずただ自分の願望をいってしまうやつ。

③思考の手順が合理的ではない
要するに、目的→目標→手段の各段階で、やるべきことをきちんと吟味せず、テキトーに決めてしまっているてやつですね。特に、目標がいい加減になることが多いのですが、その原因は①の情報不足と次に述べる「意志の欠如」だと。まったくその通りと思います。

④やりとげたいという気持ちがない
「ビッグデータ」うんたらという話にいつも胡散臭さを感じてしまうのは、「明確な意志」がなくてもデータさえ分析すれば「意思決定ができるのだ」みたいなコンテキストを孕んでいるからです。いかなる戦略も、はじめに「意志」ありきであって「意志」なしでは成り立ちません。
本田宗一郎は「思想が先、技術は後」という言葉を残しているそうですし、ヘンリー・フォードが自動車界で大躍進したのも「とにかく8気筒のエンジンを作る」こだわったからだそうです。

ここでいう意志とは、もちろん手前勝手な自己主張とか妄想ではありません。世のため人のために自分は何をすべきか?という問に対する答えです。最近の日本ではそういう意味での「意志」は面倒がられて「自己チューな意見」ばかり目に付く。そこを直さない限り「日本の復活は無い」と思います。

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