曽野綾子「アラブの格言」新潮新書2003

ぜひもっと教科書で使ってもらいたい曽野綾子先生。
この本も超おすすめです。アラブの格言やことわざを紹介しつつ、アラブ人の考え方をたいへんわかりやすく解説しています。

日本ではアメリカの影響でアラブに対して怖い印象をもってる人が多いと思いますが、アラブ人=イスラム教の考え方というのは、たいへん合理的かつ公平なもので、アメリカの拝金思想よりもいいところは少なくないと思います。

◆イスラムの五つの義務
①シャハーダ:信仰の告白(アッラーの他に神は無し)
②サラート:礼拝
③ハッジ:巡礼
④ザカート:喜捨
⑤サウム:断食

このうち④の喜捨における、「慈悲」の精神と義務については、西洋社会や日本では想像できないほど現実的に行われています。私も、大昔にエジプトで仕事をしたとき、物売りや運転手が大きな顔してバクシーシ(心付け)寄越せといってくるので非常にムカついた覚えがありますが、それほど「喜捨」の精神と行為は当たり前のこととして根付いているわけです。だから、イラクに攻撃されたクエートが戦争終わった翌日にはイラクを支援するみたいないこともふつうに起こるわけです。そのへん理解してないと、アラブとの関係は誤ります。

また「喜捨」の金額についても、アラブ独特の合理的な発想があって、相手の困窮度ではなく、必要度に合わせて金額を決めます。
どういうことか。
 たとえばベドウィン(遊牧民)の女性が喜捨を求めにきた場合。
彼女たちは銀行口座なんかもってないので、金の装飾品を貯金代わりに身につけています。だから「どれぐらい貧乏か」は持ってるものを見れば一目でわかる。
 日本人的発想なら、装飾品の少ない(貧乏そうな)人にはたくさんあげて、いっぱい腕輪つけてる人にはあんまりあげないみたいに、困窮度に合わせて金額を決めるのがふつうですが、アラブ人はまったく逆で、たくさん装飾品をつけてる人にはたくさんあげて、そうでない人には少しだけしかわたさない。その背景には「人間には皆分相応ということがある。富んだ暮らしをしている者にはたくさん与えなければならない」「過度の寛大さは愚かさと同じ」という考えがあるのだそうです。

◆アラブの格言
・自分に日陰を作ってくれる木を切り倒してくれ、などと神に頼むな
・噛みつけない手には接吻しておいて、後で骨が折れるのを祈れ
・嘘で昼飯は食べられるが、同じように夕飯にはありつけない

・水を節約するようにと言われた途端に、誰もが水を飲み始める



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